「先生は、僕が何か企んでいると思っているんですか?」





 「企む・・?」




教師は突然微笑いだした。

煙といっしょに、喉だけを鳴らして。




 「なにが、面白いんですか」



腹が立つというより、瞬間的に僕は恐いと思った。

この教師に恐怖を感じたのは、これで2度目だ。




 「企みで私のスケッチブックに放火したのか?」


 「・・そんなわけないじゃないですか。」


 「だったら何でだ、そろそろ言えよ。」




教師は急に砕けた口調で話かけてくる。

何だよ、もしかして面白がっているのか?

何でそんなに理由を言わせたいんだ。



 「そんなに訊きたいんですか。」


 「当たり前だ。」




もう 本当に帰りたい。


心底そう思っているのに、状況は落ちてゆくばかりだ。





さっきから教師は、僕から何かを聞き出そうとしている。

それはもう 本当に辛抱強く、とでもいうのか?

そんなんじゃない。

ただ、意地が悪いだけに決まっている。





あるいは




企んでいるのは




逆に この男なんだろう











「正直、気持ちがわるいと思いました。」


「何がだよ」


「先生が」





そう言うと美術教師は声を上げて笑い出した。


「ずいぶんとはっきり言うんだな。」



何がそんなに可笑しいんだ。

僕は全然、愉快じゃないっていうのに。




「だって、置いてある先生のスケッチブックを除いたらクラスの奴


の絵だったなんて、気持ちが悪い。」


「どうしてだ?」


「男の絵を描くなんて・・」





ここで動揺しているなんて、ばれてはいけない。

軽蔑しているフリをしなくちゃ。



“変態なのか この教師”



僕はそう思ったから火を点けた。



そうなんだ。

それだけだよ、意味なんてないんだから。




そう、教師が思えばいい。







しかし、実際はそんな風に動いてはくれなかった。



すこし この教師を甘く見ていたみたいだ。






「クラスの奴、か。」



笑っている筈の教師の顔が影になって、半分が真っ黒に見える。

仮面をつけているみたいな顔。

半分の顔は、きっとこんな風に笑ってはいないだろうに、




「彼、だったからだろう?」




なんで まだそんな風に笑えるんだ。












「・・・・言ってる意味がわからない」


「そうやっていつまでもしらばっくれる気かよ」


「何が、」







「だったら言うよ、村越。おまえ、いつもアイツのこと見てるじゃないか。」




言葉が




喉を通って出てこない。





ずっと下のお腹のあたりに一発 くらったみたいだ。









「私が気が付かなかったって、どうして思う?」






まだだ。

眼球が小刻みに振動して

それが眩暈と大差ないほど気持ちが悪くて

その所為で心拍数が異常に速くなっていく。



それなのに


まだ喉は開放されない






「どうして其処にあったスケッチブックを、おまえが見たか解るか?」





もう なにも言わないで


状況を

把握出来ていないうちに速めないでくれ


意味を捜しているんだから






「私が置いたからだよ」






すこし 待って



なにを言ってるのか







ああ




それなのに








あんたは 何でまだ そんな風に笑ってるの?





























美術室 4