「・・それで?どうするんだ。」
「あー・・、えっと、とりあえず捜そう。」
やることなんていつもと変わらないのだ。とにかくマツリを見つけるしかない。
さもなければ、マツリが自分で帰ってくるのを待つだけだ。
「でもさ、狩野。証明するって云ったって、そんなこと出来るのか?」
「どういう意味?」
「だからさ、他人の家でくつろいでるマツリを、見つけたりしない限りは・・」
「だから、二股じゃないって!」
「わかったわかった。つまりさ、そういう現場を目撃しない限り証明なんて出来ないだろ?」
狩野はようやくそのことに気がついたようだった。
「まさか、マツリに訊くわけにはいかないだろうが。」
「そうだね・・・どうしよう」
どうしようもないんじゃないか、と僕は思った。
大体捜しに行ったって、いつも見つからないじゃないか。
狩野の心配が極限にほど近くなったところで、彼らはいつもひょっこり帰ってくるのだ。
「どうすればいいんだよッ」
「だから、なんでお前は僕に当たるんだよ、知る分けないだろう?」
結局、言い合っても埒が明かないので(あの後、狩野は一方的にヒステリー状態を起こした)、
その日いちど僕らは家に帰ることにした。
僕が思いがけずそのことに気が付いたのは、その日の夜だった。
もう12時をまわっている。
家族は全員、もう眠ってしまったのか。家はシィンと静まりかえっている。
「そうだよ・・・。」
なんてことだ。
バカバカしい、何だってこんなことに気が付かなかったんだろう。
むしろ、そもそも狩野のやつ。何で思い出さないんだ。
「そうだよ、いまは春じゃないか・・・。」
この頃、とくに夜半にかけてよく鳴く。
唸るような、赤ん坊のような泣き声。そしてすばしこく走り回る、いくつかの気配。
窓の外で騒がしく、彼らは春を迎えていた。
「猫って、いまが盛りの時季だよなぁ・・」
なんだよ、ほんとバカバカしいよ。
マツリのやつ、きっと彼女でも出来たんだ。
こんな季節だから、帰ってこないのもそんな理由だろう。
明日、狩野に会ったらこのこと云ってやろう。
狩野はきっとまだ、そのことに気が付いていないだろうから。
そう思いながら、そろそろ寝ようと電気を消した直後のことだった。
「・・・ぃませー・・ん」
外で、誰かが誰かを呼ぶ声が聞こえる。
「・・すいませーーん・・」
こんな時間に、子供の声だ。
おかしいな、遊んでいるのかな。どこのうちの子だよ、煩いなぁ・・
「すいません、石井さんですよね」
びっくりして僕は飛び起きた。
いま、たしかに“石井さん”って・・
「すいませーん、」
電気をつけずに、音をたてないように窓から外を覗き見る。
外は相当暗く、今日が満月じゃなかったら何にも見えなかっただろう。
目を凝らしてみると、ぼぅっと月明かりをうけて、確かに人影を確認できた。
庭に、コチラを見ながら誰かが立っている。
「あぁ、やっぱり寝ていなかった。」
心臓が飛び上がった。
覗いたつもりだったのに、相手にはこちらの様子が見えているらしい。
「あの、どちらさまですか」
窓からおそるおそる声をかける。
なにしろ僕意外の家族は、誰も気が付いていないようだ。
「家のものは、もう皆寝てしまったみたいなんですけど・・」
すると、影しかわからないが、
確かに子供の声がこう云ったのだ。
「いえ、用があるのはあなたになんです。どうか、降りてきてくれませんか?」
次項
l